身内の者でも成年後見人になれますか
平成23年の統計では、後見人の55%は親族から選ばれています。成年後見人になるには法律や福祉の特別の資格を持っている必要はありません。ただし、未成年者、過去に成年後見人として問題を起こし家裁から解任されたことのある者、破産者、本人と訴訟で争ったことのある者などは、選ばれないことが決められています。保佐、補助も同様です。 なお、「Q申立書で候補に書いた者が後見人に選ばれないのは・・・」もお読みください。

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本人の戸籍や住民票に何か載りますか
戸籍などには何も記載されません。平成12年3月までは民法に禁治産・準禁治産の制度があり、戸籍にその事実が記載されました。関係者には抵抗感があったと思います。現在は成年後見の事実関係は登記所で発行する登記事項証明書により証明されます。この証明書は決められた関係者しか取れません。

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保佐とは?
一見しっかりしている時もあるものの、判断力がかなり低下している人が対象です。もっとも、本人は能力の低下をあまり自覚していないことも多いようです。本人が不動産の売却や自分の財産を贈与するなど、民法13条に定められた重要な財産の処分を行う時は、補佐人の同意を得なければなりません。本人の保護のために必要であれば、保佐人は本人の行為を取消すことができます。保佐人に代理権を与えたり、特別の同意権を与えるには、本人の同意が必要です。

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補助とは?
日常生活はあまり問題なく送っているように見えますが、難しいことになると十分に理解できず、悪質商法などにあう人が対象です。本人が申立てる場合を除いて、補助開始の審判や、補助人にどのような同意権や代理権を与えるかについて、本人の同意が必要です。補助人に同意権を与えた行為については、以後は本人は補助人の同意を得なければ一人で行えません。

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被後見人は遺言ができますか
遺言能力があれば遺言できます。ただし、遺言能力があることを判定するために、自筆証書遺言作成時に、①医師二人以上の立会い、②その医師による遺言能力があった旨の遺言書への付記・署名・押印が必要です。公正証書遺言の場合も公証人が①を求め②を記載させます。
なお、被保佐人、被補助人の場合はこのような特別の要件はありません。

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被後見人が後見人に無断でした取引は有効ですか
被後見人が取引の意味を理解せずにやったのなら無効です。意味を分かってやった場合も後見人から取消せます。しかし、本人が詐術的に、自分は被後見人ではないと相手をだましたような場合は、取消せなくなります。

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浪費者に成年後見制度は使えますか
成年後見は精神上の障害により判断能力が不十分な方に対する制度なので、ただ単に浪費を繰り返すというだけでは利用することはできません。
平成11年改正前の民法11条では、単なる浪費者であっても準禁治産者として保佐人を付すことができましたが、改正後はできなくなりました。

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複数の後見人が就く場合は?
裁判所が必要と考えれば複数の者を後見人に選ぶことがあります。各後見人は単独で権限を行使できますが、家裁が、権限の共同行使や、分掌の定めをすることもあります。分掌とは、たとえば財産管理はA後見人が担当し、身上監護はB後見人が担当するというように、各後見人の役割を分けるものです。

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後見監督人とは?
家庭裁判所は、必要があると認めるときは成年後見監督人などを選任して、成年後見人などを監督させます。監督人が選ばれるのは、後見人が親族であり、後見業務をよく知らないか、トラブルが起きる可能性が高い場合が多いようです。
なお、任意後見では任意後見監督人が必ず選ばれます。

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法人後見とは何ですか
法人も成年後見人などになれます。各地域の社会福祉協議会などが法人後見人として認められています。
ただし、本人と利益相反の関係にならないか、現実の後見事務処理能力があるか、本人の資産を事業に流用するおそれがないか、直接の担当者の不正をチェックできるか、いざという時に損害賠償できるかなど、家裁が吟味します。

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市民後見人とは?
法律や福祉の資格は持たないものの、社会貢献への意欲や倫理観が高い一般市民の中から、第三者後見人を採用しようというものです。先進的な地方自治体が養成講座を行い、現実に一定の成果をあげている地域もあります。ただし、全体としては整備の努力が始まったばかりで、社会に定着するかは、まだ何とも言えません。

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申立の即日聴取とは何ですか
申立を受付けるパターンは家裁によって違います。通常はまず窓口に書類を提出し、裁判所の日程に合わせて後日、申立人や後見人候補者との面談が入ります。
それでは二度手間になるため、申立書の提出と同時に面談をする家裁もあり、これを即日聴取と言います。

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「鑑定」が不要の場合もあるそうですが
本人が発語も、意思の疎通も、体を動かすこともできないような事案では、鑑定するまでもなく後見の必要性が明らかであるとして、省略されます。植物状態でないものの相当重度で回復が見込めない場合も、それに準ずる扱いがされるようです。

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お金がなくても成年後見制度は使えますか
申立実費の助成のために、一部の市町村では成年後見制度利用支援事業というものを用意しています。また申立実費と弁護士・司法書士への報酬を貸与してくれる日本司法支援センターの民事法律扶助もあります。
成年後見制度利用支援事業は第三者後見人への報酬にも使える場合がありますし、利用に制限はありますが、公益信託成年後見助成基金という制度もあります。あきらめずに一度ご相談ください。

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申立書で候補に書いた者が後見人に選ばれないのはどんな場合ですか
成年後見人を選ぶ権限は家裁にあり、申立人の希望する候補者が選ばれないことがあります。親族間に対立がある、候補者が高齢である、候補者が自分や親族のために財産を使う可能性がある、本人の財産が大きい、本人の財産状況に不明な部分がある、などの場合です。
なお、希望する候補者が選ばれないから申立を取り下げる、ということはできません。

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家裁が選んだ後見人が気に入りません
選任された後見人と本人や親族との相性が悪いといった理由では、後見人を辞めさせることはできません。
もっとも、選ばれた後見人に不正行為などがあれば、親族はその後見人の解任を申立てることはできます。その際も後任者は家裁が選ぶのであり、親族の推薦する者がなるというわけではありません。

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後見制度支援信託とは?
平成24年から始まった制度で、被後見人の財産の相当部分を信託銀行に預け、後見人の管理する財産を少なくし、私的流用などが起きる可能性を減らそうとするものです。パターンとしては、初め弁護士や司法書士が後見人になり信託を済ませ、その後、親族後見人に日常業務を引継ぐことが多いようです。

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成年後見人ができないことは?
本人の婚姻、養子縁組、離婚、子の認知などの身分行為は、本人の自由な意思に委ねられるべきことなので、後見人が代理人として行うことはできません。後見人が本人に代わって本人の遺言を作ることも、以前に本人が作ってあった遺言を取消すこともできません。なお、次問も参考にしてください。

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被後見人に対する医療について後見人が方針を決めることができますか
成年後見人には、本人の通院、入院、費用の支払いなど医療契約に関する代理権はありますが、医師の勧める手術をするかしないかというような、医療行為に対する同意権はありません。本人の意思を推測することができる近親者に決めてもらうしかありません。

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被後見人の財産から支出してよいものは?
本人の生活費、施設費、医療費など。本人に面会に行くための交通費、コピー代などの後見人の職務を行うための必要経費。本人に配偶者や未成年の子がおり、その者らには収入がない場合のその者らの生活費。親しい者への慶弔費などが支出できます。しかし、すべて必要性がなくてはなりません。また、被後見人の収入・資産から適当と認められる額に限られます。

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被後見人に借金があったら?
被後見人の財産から返済しなくてはなりません。ただし、困窮していた被後見人に身内が渡した生活費など、借りたのか貰ったのかあいまいなものは見極めが必要です。また、消滅時効が使える事案では、それを主張すべきでしょう。
なお、後見人が申立人であり、被後見人に貸しているものがあるなら、申立の時点で必ずその事実を書くべきです。不明確だと後見人の債権が消滅したことにされる場合があります。

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後見人は相続税対策や資産運用ができますか
後見人は本人の生活と財産を守るために選ばれます。将来を見越しての相続税対策は、本人の利益のためではなく相続人の利益のために行うものです。原則的に相続税対策はできないと考えてください。
また、元本が保証されない投資信託や株式などの金融商品を新たに購入することは、本人にリスクを伴うため認められません。

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本人と後見人が利益相反するのはどんな時でしょうか
本人に不利益を負わせれば、後見人が得をする場面です。本人の所有物を後見人が買う場合や、本人と後見人が兄弟で亡父の遺産分割をする場合、後見人のローンのために本人の不動産に担保を付けるような場合です。このような場合は特別代理人か後見監督人が本人を代理します。

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親族後見人でも報酬をもらえますか
もらえます。家裁に報酬請求の申立を行うと、家裁が、本人の資力、成年後見人の事務の難易などを考慮して、報酬を与えるかどうか、額をいくらにするかを決めます。後見人が親族の場合も変わりません。ただし、与えないと決められたり、額が少ない場合でも、決定を不服として争うことはできません。

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途中で後見人を辞任できますか
原則的にはできません。成年後見人の業務は本人が亡くなるまで続きます。しかし成年後見人に遠隔地への転勤が決まるなど、仕方のない事情がある場合は認められます。ただし、後任の後見人のあてをつける必要があり、家裁に後見人辞任許可と後任の成年後見人の選任を同時に申立てることになります。

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任意後見人の報酬はどう決められるのですか
「甲は乙に対し、この契約の効力発生後、本件後見事務処理に対する報酬として1か月につき金○万円を、毎月末日限り支払う」などと決めます。
契約中で決めていないと任意後見人は報酬を請求できません。親族が後見人なら無報酬とし、かわりに遺言の中で遺産の分配を多くすることもあるようです。

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見守り契約とは?
任意後見では、本人が衰えてきたら、任意後見契約を発効させなくてはなりません。任意後見受任者が本人の同居者でない場合は、定期的に本人と面接をして、本人の生活・健康の状況を把握し、いよいよとなったら受任者が任意後見監督人の選任を家裁に申立てます。
将来型の任意後見契約として契約中にこの業務を含めることもありますし、別立ての契約とすることもあります。

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死後事務の委任契約とは?
任意後見契約も法定後見も、本人が死亡すると後見人らは代理人の資格を失い、業務ができなくなります。
本人死亡後の入院費の清算、葬儀・納骨、家や施設の部屋の片付けなどの身辺整理については、身寄りがなかったり、いても頼めないなら、任意後見とは別にこれを頼む委任契約を結んでおく必要があります。

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